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May 16, 2005

JR西日本列車事故とマンション関係の法律問題

JR西日本の福知山線の列車脱線事故による被害者の皆様とご家族の皆様は本当に大変だと思います。特に亡くなられた方々については本当にご冥福をお祈りしたい。報道機関等でも連日報道されていたとおり、事故に関する原因や責任関係については今後も各方面から注視されることになると思われるますが、列車が飛び込んだマンションの住人とJR西日本との補償関係についても報道されるようになってきているようです。
 事故当初の報道ではJRによる丸ごとの買取の可能性について触れているものがありましたが、この件については、結構厄介なことになる余地があるのではないかとろじゃあは心配しております。こんな記事がありました。
脱線事故、JR「マンションは安全」宣言
マンション住民の苦悩と怒り…ローンも借金も残り
唐突かもしれませんが、関係者は、阪神大震災の時の教訓と英知に学ぶ必要があるかもしれません。問題の解決を困難にする前に阪神大震災の時のマンションの一部「滅失」からの復旧か「建替え」かで権利調整に尽力されたであろう兵庫県弁護士会や大阪弁護士会のこのような問題に英知を結集させたであろう弁護士の先生方や関西圏でのマンション法や民法の研究者の先生方に、早めにこういう問題への住民そして今回は「被害者」としての合意形成のために話を聞く機会を持ったほうがよいと思います。まあ、両方の弁護士会とも、このような形で社会的に困っておられる方々に対してはもう既に親身になって相談に乗って差し上げているのではないかと思いますので、ろじゃあの余計なおせっかいかもしれませんが(^^;)。
ちなみに、ろじゃあがこの問題が気になるのは、「被害者」であり「住民」であるマンション所有者の方々の「所有」しているものが、戸建の物件ではなく、マンションという不動産であるからです。素人なりにちょっと書かせていただきますね。

マンションというのは、一般の人が考えるより権利関係が厄介です。一度でも管理組合の役員をやったことがある人はよくわかると思います。あれは議事進行だけだろうって?いやいや、もし仮に滅失した建物の復旧であるとか建て替えとか一括売却なんてこととになったらマンションの各部屋の所有者の人たちとの権利調整は相当厄介になるのですよ。これが復旧や建替えの場合は特にややこしくなります。
 マンションの権利関係は、区分所有法という特別法でその枠組みが判断されます。この法律では以前は住民の意思決定について全会一致が前提となっていたので、実務上いろいろ困難な問題が生じていた時期があります。現在では四分の三以上の賛成でこのような意思決定を行うことが可能になっています(62条や61条)。ところが複雑な問題も出てきます。阪神大震災で期せずして問題になったのが建て替えか修繕かの問題だったようです。取り壊して建て替えるのか、滅失箇所を復旧させて住み続けるののか・・・区分所有者の皆さんで決めなければならない問題なんですが、みなさんそれぞれのお立場があるわけです。購入時ローンで買ったかとか購入の時点がいつだったか(市場価値の激変の影響が違ってきます)とか。具体的には、例えば、建て替えのときの建替積立金以上の負担が必要になることが多いのでローンを組んでいてそれ以上の資金調達が難しい人が多い場合には最小限の修繕しか支持し得ないという状況も出てくる訳です。阪神大震災時の滅失の復旧・修繕や建て替えを要するマンションの処理については結構時間がかかり関係者が皆で悩まざるを得なかったというのはこういう住民の皆さん方の事情があるためです。
 では今回の場合はどんな問題が出てくるのか。
 住人の間での今後の選択肢としては、(1)JRに買い取ってもらう、(2)住み続ける前提で修理してもらう、(3)とりあえず修理はしてもらって買い取ってもらうか住み続けるかは後で決める、(4)マンションを建替える・・・あたりが想定できるでしょう。この場合(1)と(2)の並存はなかなか難しい。そもそも買い取り価格でJR西日本と事故以前の市場価格で合意できるとは限りません。仮に買取希望者が全員希望価格で買い取り合意に達したとしても(2)を選択した住民からするとマンション運営上の問題が出てきます。残った人間としては今後このマンションの市場価格がどうなるかを気にせざるを得ません。自分のローン残高や取得価格との関係で、今後の売却時の不利益を予め求めたくなるのは人情というもんでしょう。
 おまけに風評とも戦わなければなりません。こういう出来事があったということだけで今後の空き部屋の取得者が出てこなかったりする場合(現に住民の皆さんは同様の理由で住み続けたくないと考えておられる方々もおられるようです)、入居者や取得者の集まり状況によっては将来の建て替えの積立金も満足に集まらないし、そもそも管理組合の運営自体に深刻な影響が出る場合もあり得ます。となると修繕だけでなく、建て替えを求める人も出てくるかもしれません。この場合は住み続ける前提の人と売却を前提とする人に分かれるでしょう。JRからすると完全建て替えにかかるコストとそこそこの値段での買い取りのコストを比較して、建て替えのコストのほうが高い場合には、個別の住人に交渉して低い価格での買取あるいは管理組合に対して低い価格での一括買取を提案してくるかもしれません。この場合に、設定価格次第では、ローンで買った人と現金で買った人との間で利害が対立する場面も出てきてしまう場合もあるかもしれません。
 これらのことを考慮すると引き続き残る方と買取を希望する方との間に不公平感が残らない形で、JR西日本が対応しようと思えば、買取価格を事故前の取得価格を元に設定し、残る住人の方との関係ではマンションの管理運営に問題が出て来ないようにJR西日本が区分所有者であり続けることで残る住人の方の不安を解消するということも考える必要が出てくるかもしれないでしょう。このような配慮がないと、滅失した共有部分の復旧(今回の場合は61条の1項ではなく5項の場合か?)か否か、あるいは建替えの意思決定についても、買い取り希望住人と済み続けることを希望する住人との間で利害対立が惹起されかねない。これは非常に不幸な事態です。このようなことを避けつつ交渉にあたることがJR西日本には求められるでしょう(買取価格一本で設定するのか、現状の市場価格+損害賠償という設定にするのかどうかで残る選択をする方との問題は出てくるかもしれない)。これをあくまでも法的問題は最終的には裁判でというところを本筋で考えるのはどうも時代にあっていないのではという評価を受ける可能性は考えておいたほうがよいと思います。
 今回の問題の解決については、やはり関西で問題になった三菱マテリアル他4社のマンションの土壌汚染問題での和解の内容が参考になるかもしれません。これは当事者間では色々あったとは思いますが、上場企業としての対応としては一定の評価を受けるべき内容なのではないでしょうか。

提案の概要は、継続して所有を希望される所有者の皆様に対しては、購入価格の25%を支払い、売却を希望される所有者の皆様に対しては、双方が合意した不動産鑑定士に土壌・地下水問題がないことを前提とした鑑定評価を依頼し、その鑑定価格による買い取りを行うとともに、買い取り価格の10%を支払うことなどです。

 ただ、気になるのは継続して所有する所有者について購入価格の25%を支払うという「25%」という数値を今回そのまま当てはめてよいかどうかですね。大阪アメニティパークの分譲価格層と購入者の所得水準、継続住居可能性についての判断要素等を勘案すれば、今回のマンションは実際に1階部分がかなり滅失していますし、ローンの組み方等の点で保有を続ける方についての補償としては25%が十分ではないという立場は当然あり得ると思います。いずれにしろJR西日本としては同じ関西の上場企業として三菱マテリアルがこのような和解を行う意向を公に示したという事実を勘案して同社グループのレピュテーションをどう考えつつ、株主への説明責任も考えながら被害者の方々への対応を十全なものにしなければならないという相当きつい舵取りを行わざるを得ないのは間違いないと思います。株主への説明責任といってもリーガルリスク関係で補償を最小限にするという意味で使っているわけではないのは言うまでもないですよね(^^;)。むしろ経営者のCSR(社会的責任)やSRI(社会的責任投資)への姿勢も問われているとろじゃあは思うのですがいかがでしょうか?
 ところで、マンションの「安全宣言」はどこのセクションがどこと連動して行われたのでしょうかね・・・内部統制システムとりわけコンプライアンスやリスクマネジメントの「統合」がどのような形で経営上取り扱われているのか・・・一昔前の上場企業のモニタリング環境とは異なることを関係者は早く認識する必要があると思います。こういうときこそ経営者と本社がしっかりしないと、現場で遺族の方やマンションの所有者の方々の前で汗をかき、時には叱責を受け、ただ唇をかみ締めるしかない「最前線」の従業員は「誠実な方であればあるほど」たまりませんぜ。まさかそれも「あり」のビジネスモデルではないでしょう、鉄道業というのは。ろじゃあはその点では鉄道業に携わる方々の良心はいまなお信じたいと思っているのです。
 参考になるかどうかわかりませんが、かつて書いた4月5日付けの記事「「だいせん」はなぜ廃止されたのか・・・リスクマネジメントと「活きた」インフラ」もあわせて読んでいただけると鉄道を愛するもの、そして今後もたぶんお世話になることが多いであろう者としての心情は共有していただけるかもしれません。
いつもより固い話になってしまったろじゃあでした。ではでは。

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Comments

ろじゃあさん、遅い時間にすいません。たしかにマンションの買取問題については、おそらく ろじゃあさんの分析されている基準で進むでしょうし、すでに兵庫県弁護士会でも対応を検討されているようです。
ただ、比較されている三菱マテリアル、地所の和解については、少し状況が違うように思います。三菱はトップ3人がいまだ大阪府警の捜査対象となっていますし、両罰規定によって前代未聞の「宅建免許取消」処分を受けるかどうか、という瀬戸際に立たされていますので、和解をすることが「絶対条件」であります。2002年にコンプライアンス部門において、誠実な企業として表彰を受けた三菱地所ですが、刑事処分を免れるための方策ですから、自発的な和解提案とは到底いえないものと思います。
ただ、ろじゃあさんのおっしゃるとおり、あの尼崎のマンションは高額のローンを抱えていらっしゃる方が大勢いると思いますので、できるだけ三菱地所と同様もしくはそれ以上の条件で解決すべきでしょうね。大阪府警からにらまれているのではなく、国民全体からにらまれているわけですから。

Posted by: toshi | May 17, 2005 01:39 AM

>toshiさんへ
いつもありがとうございます。そうですね、確かに自発的な和解提案とは言えないという評価なんでしょうねえ。ただ、今回のJR西日本についてもろじゃあが示したような内容はとても「自発的」には対応できない内容だろうとは思うんです。今までの経営の傾向からしますとね。「自発的かどうか」は別にして、三菱さんたちの対応は参考に「されざるを得ない」だろうという含みがちょいと入ってたんですけどね。ぶっちゃけて言えば、まだ多くの企業でCSRって言っても本音と建前、結果に対するプロセスのフィクション性というのは拭い難いっての実情なのではないでしょうか。その意味では自発的か否かよりは被害者の早期問題解決に軍配上げればどっちもどっちではないかと・・・って感じで書いてしまったのです。ちょっとプラグマティックすぎますかね(^^;)。申し訳ありません。大阪での情報またありましたらお願いします。それでは

Posted by: ろじゃあ | May 17, 2005 12:46 PM

ろじゃあさん、こんばんわ。エネルギッシュに記事が増えていますね。(^▽^*)。。oO
なるほど、おっしゃるとおりかもしれません。私が読みが浅かったようです。(ただ私が某住専の代理人をしていたときの府警の捜査の「恐怖」と向かい合った体験と重なって、代表訴訟にならない範囲で最大限の和解をしようと意欲的な三菱の姿が目に浮かんだものですから。たいへん失礼しました。)企業のCSR問題につきましては、私のような自営業者ではなかなか本当のところを把握するのが難しいんですが、これも「いつかは企業価値に影響を及ぼすほどなモノサシになる!」と期待をこめて研究しているテーマなんです。最初にろじゃあさんのブログに目がとまったのも、この文字が躍っていましたので。(*^^*)ポッ
またいろいろと教えてください。

Posted by: toshi | May 17, 2005 09:05 PM

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