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August 14, 2005

十人十色、法務部いろいろ(第五回)・・・「法務」というお仕事(3):師の教え

前回の終わり   前回まではこちら→第一回 第二回 第三回 第四回
・・・という意味で、ろじゃあにとっては「運命の電話」だったのであります。・・・さて、H課長が電話を切った後、ろじゃあはH課長からこの一件について指導を受けることになります。次回は、そのあたりからにいたしましょう(つづく)。

  H課長が受話器を置いた時、ろじゃあは心配で傍らに立ってました。
  そしてその途端、
「ご迷惑かけて、すいませんでした。ありがとうございます」と頭を下げてました。
「しょうがねえな、まったく」
と周りによく通る声でいいながら、椅子に体をうずめこちらを見上げてちょっとニヤニヤしています。
「まあ、ちょっとこっちこいよ。コーヒー持って来い」
そう言って、ろじゃあを法務相談のための別室に促しました。
  コーヒー持って部屋に入っていくと正面を向いて先ほどのニヤつきは消えています。
「○○(←ろじゃあの本名)、大学院出てても通用しなかったな
とタバコをくゆらせてます。


「そうっすね・・・」
ろじゃあは珍しく神妙にしてました。内心はそこまで言わなくても・・・と少しささくれつつですが・・・。
「うちの会社にはいろんな奴がいるんだ。さっきのⅠなんぞ、俺もよく知ってるんだが、仁義がわかるまじめで前向きな奴だ。あいつ、何学部出か知ってるか?」
「いえ、知りませんが、あれだけ○○法の話もご存知なんっすっから、法学部じゃないんっすか?」
  叱られると思ってますから、質問の意味がよくわからなくなってました。それこそ脊髄反射的にこのようにろじゃあは答えたのですが・・・
「おまえは、単純だなあ・・・。だったらこんな質問する訳ないじゃねえか、ばかやろう」
そう言って煙を吐き出します。まあ、確かにそうだなあ・・・と上を向いてると、
「あいつは文学部だ。そして、ついでだから言っとくが、俺は化け(ばけ)学の方の理工学部の化学学科、うちの法務部のKさんは商学部、部長は経済学部、ほかのスタッフも法学部以外だ。それなのに法学部どころか法学修士とってるお前が何で使い物にならないんだ
  答える言葉が見つかりません。
「お前、今、確かにそうだと思わなかったか?だがな、それはそれで了見違いだし、驕りの表れでもあるんだぞ」
  驕り?・・・よくわかりませんでした。
「お前が、ある程度うちの業界の特別法関係をかじっているのは知っている。修士論文も読ませてもらった。だがな、ここは会社だ。法務部でお前に要求されてるのは何だと思う?」
「専門知識を生かして会社の収益に寄与できるような・・・」
「ば~か、新入社員のぺエペエに最初っからんなこと求める訳ねだろうが。このぐらいの規模の会社ってぇのはそんなもんだ。だいたい、どこの馬の骨かわからねえ修士出の頭の硬てぇ兄ちゃんに仕事任せられるのか?って奴のが多いんだ、この本部でも。よく覚えとけ。」
  そうだったんだ・・・一気に落胆が顔に出てしまったかもしれません。
「だからよ、あんまり肩肘張るな。ここんとこ、おめえリキみ過ぎ。もたねぇぞ。新入社員のときはある意味では間違えて当たり前なんだ。だからな、数をこなさなきゃいけない。それと、相手にいろんな奴がいるから、仕事のえり好みはできねえ。少なくともヒラのスタッフはな。」
そう言ってまた一服。ちょっと笑みが戻ってます。結構よくタバコを吸う上司でした。
「・・・そんな程度の期待っちゅうか、むしろ寛容と思えよ、気遣いの中で、一人で法学修士だからと言って「ええかっこしい」するんじゃねえ」
  「ええかっこしい」?ろじゃあが?
「だからな、必要以上に構え過ぎるなといってんだよ。それはある種の「驕り」なんだよ。会社の法務ではな、法学部で勉強しててバックグラウンドがある方がいいに決まってるが、それは必須じゃあねえんだ。法学部を出てねえやつだってちゃんと日常業務はこなせるんだ。その点、「法学部は出てるがなんも中身のない奴」のがよっぽど会社では使えねえんだ。少なくとも、おめえは、そいつらと一緒じゃねえんだろ?それともおめえもそんな若いうちから肩書きだけで仕事するつもりか?」
  いえいえと首は振りますが、さっきっからろじゃあの心の中の「いやらしい部分」はピンポイント爆撃で瓦解し始めていました。
「とにかく自分の基準からするとうまく対応できないのは恥ずかしいからと電話と業務から逃げるな。さっきおめえは、俺に電話を「振ろう」としたろ?んなこと100年早ええんだ。俺がお前に注意しなきゃならんのはまずこの点だ。そんなことよりどんどん失敗していろんな問い合わせに早く慣れるこった。そして、「自分が何を知らないか」を理解していくようにしろ。その限りでは、何かあってもその後のフォローは俺が何とかする。その代わり、同じ失敗は2度繰り返さないようにしろよ。その場合は平気で査定に反映させるからな。」
タバコを灰皿にこすり付けて席を立とうとして、
「ああそうだ、社内でいろんな人間に会うと思うが、大学院がどうのこうのと自分からは絶対ぇ口にするんじゃねえ。役員の連中や部長クラスはおめえのことは本社内ではみな知ってる。だから声かけてくるだろ?」
  確かにそうでした、当時のろじゃあはこれが普通だと思ってたんですねえ。いま考えると冷や汗もんです。
「ありゃあな、品定めだ。まあ、パンダだなパンダ。だから、みんながみんなおめえに好意を持ってるとは限らねえ。そんな状況で自分から必要以上に「俺が俺が」ってやってると作らないでいい「敵」を作ることになる。まあ、ひとところで腰落ち着けて塾講師のバイトが続けてられたいたみたいだからこういう対人関係のヒダヒダは4卒の兄ちゃんたちよりは理解できるだろ?サラリーマンとして食ってくつもりならそれくらいのことは「イロハ」だ。気をつけろ」
いつの間にかもう一本のタバコが半分ぐらいに。
「注目されるのは結構つらいんだぜ。だからカッコはつけるな。自意識に振り回され過ぎるとサラリーマンは続けられねぇ。んな奴は、弁護士でも会計士でも自分でやりたいようにやれる自営業者になった方が自分のためだ。でもよ、おめえは、家族のためにサラリーマンとして食い扶持を確保する腹決めをしてうちに来たんだろ?だったら、今は頭を垂れつつ求められたらしたたかに全力を尽くせ。おめえならそこそこできるだろう。こないだの一件見てればそれはわかる。ばかじゃなさそうだしな。俺は馬鹿が大(で)ぇ嫌れぇなんだ。俺は、おめぇぐらいの時、営業店でかみさんと子供抱えてひでえ経験もあるんだが、それからくらべりゃ、お前は新入社員どころか一般の本社スタッフからしても恵まれてる。この段階で本社内の人間が何らかの形でおめえのこと知ってるんだからよ。famousかinfamousかは別にしてな(笑)。俺にいわせりゃ贅沢なんだよ。この程度のことで悩みやがって、ばかやろうが。営業店では正当な評価を受けられなくて苦労してる奴はごまんといるんだ。だがな・・・あいつらがうちの会社を支えてるんだ。だから、今から本社病にはかかるなよ。天狗になりかけたら俺が冷水をかけてやる。まあ、奥さんもいるんだから、せいぜいがんばるこった。以上。」
そういって、彼は一人でカップ片手に部屋を出て行きました。
  ろじゃあは、・・・法務相談のための部屋でいろいろなことをしばらく考えて・・・頭の整理をしてから自分の席に戻っていきました。席の隣では彼が額に汗しながら電話口で頭を下げていました。どうやら役員からの電話のようでした(^^;)。ろじゃあは、結局、いろんな意味で、在職中、彼を師としていろんな場面で法務スタッフとして仕事をしていくことになります。
  
  次回は、課長からの指導に対して考えたことと課長の最後の発言にあった「こないだの一件」=「2時間契約」事件について触れる事にいたします(つづく)。

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Comments

こんばんわ。企業の海外法務部から留学しているものです。このシリーズはいろんな意味で凄くためになっています。自分が始めて本社の国内法務部に異動したころのことを思い出してしまいます。続編を期待しております。

Posted by: dtk1 | August 14, 2005 11:52 PM

dtk1さんへ
法務部から留学ですか。うらやますいなあ(^^;)。
ろじゃあがいたところはもっぱら国内業務で、海外案件は大手の渉外事務所と連携してという体制でしたので、国際法務の部分についてのスタッフ育成までは人事政策上確保されていなかったんですよねえ。
国内法務については移動したての頃のどきどき感は大概の方々は持っているものだと思いますので、楽しんでもらえればと思います。業態と個社の特性を出しすぎるのもどうかとは思いますがあまり一般化しちまうと「創作」になってしまうし・・・ちょっと悩ましいところですけどね(^^;)。
また遊びにきてくださいまし。

Posted by: ろじゃあ | August 15, 2005 01:31 AM

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