« 法務よ吠えろ 歌声よ怒れ | Main | 報道による人権侵害と放送による人権侵害・・・一緒か?別か? »

August 11, 2005

十人十色、法務部いろいろ(第四回)・・・「法務」というお仕事(2):運命の電話

前回の終わり   前回まではこちら→第一回 第二回 第三回
・・・そんななか、2つのアクシデントが起こります。ひとつは、冒頭に掲げた「運命の電話」、そしてもうひとつは「2時間契約」事件であります。次回は運命の電話からはじめたいと思います(つづく)。

  今回と次回で、法務部スタッフとして仕事を始めたろじゃあが早々に遭遇した二つの出来事を通じて、法務というお仕事について考えてみたいと思います。
  ところで、ろじゃあが配属された法務部の陣容は、部長一人、次長課長クラス2人、スタッフ2人で、スタッフ2人は女性でした。ろじゃあの印象としては、会社の規模からすると人数は少ないなあという感じでした。組織的には、営業店および本社の業務を統括する本部の一部局という位置づけです。そんな中でろじゃあは、日常業務をこなさざるを得ない状況におかれていました(←給料もらってんだから日常業務は当然こなすのですが(^^;))。
  ある日、一本の問い合わせ電話が入ります。大阪地区統括本部の営業部からの問い合わせでした。

  受話器をとると、丁寧な中にもドスのきいた鋭い男性の声。
「大阪の営業部のⅠだが、ちょっといいかな」と話を始めます。
  提携先との契約書の作成上の質問と法的判断、そして契約書に貼付する印紙税の件が主な問い合わせ内容でした・・・といっても後から再構成したからいえる話でして、その時は聴くいてメモするのが精一杯。知らないことばも目いっぱい出てて来ます。今までの経験と院生時代の知識である特別法の省令と通達まで調べないと確答できない類の話だというのは察しが付いたのですが、その場ではなんともはや・・・という感じになってしまいました。
  頭が少しあせり始めてるのが自分でもわかってて・・・仕方なく、「少々お待ちいただけますか」と断って、電話を保留にし、ろじゃあの教育係の課長に質問しようとすると、彼は一言、
「自分で何とかしろ」
と言ってすまして自分の仕事を続けています。
「いや、先方は大阪のⅠさんという方で、なんかすごく急いでいるようですので・・・」
’何とかしてください’という言葉を出そうとした矢先に、
「だから、早く何とかしてやれ。自分で考えろ」
という言葉がさっきより強い口調で飛んできました。
  もうパニックです。仕方なく、机上の通達集と特別法のコンメンタールを必死でめくって何とか方向感だけは出せそうになった段階で、保留を解除し、ろじゃあは電話に出ました。
「お待たせしてすいません。お問い合わせの件ですが・・・」という言葉をさえぎるように、受話器からものすごい怒声が飛び込んできました。
「ばかやろう、何分間待たせややがんだ。だいたい、こっちだってすぐには答えが出ないかもしれないとは思いながら本社に電話をかけてんだ。それを何の断りも入れずに5分間も保留にしやがって。大体、大阪東京間で無駄に5分も保留して電話代どれだけ無駄にかかってると思ってんだ・・・お前、誰だ?Hさんじゃないだろう?」
「はい、新入社員でして。申し訳ありません。」
「いいか、よく覚えておけ。こちとら、本社に問い合わせをする場合は相当迷ったときが多いんだ。そんなときは、次長だろうと課長だろうと新人だろうとそんなこたあ、関係ねえんだ。こっちは判断が必要なんだ。言い訳言うんじゃねえ。んで、さっきの件は結局どうなったんだ?」
「え~と、○○法の第3○条ではどちらでも大丈夫なように思うんですが、省令の○条では結構制約があるようでして、ただ通達では何とかなると思うんですけど・・・」ここで前にも増して大きな声でろじゃあはどやしつけられました。
「いいかげんにしろ、ばかやろう。現場に判断を伝える本社の担当者が「だと思います」とか「思うんですけど」なんて言葉使うんじゃねえ。それじゃあ、現場じゃあ使いものにならねんだよ。提携先様に「~だと思いますから」って俺達が言えばいいのか?そんな甘い世界じゃあねえんだ。責任もって回答できねえんなら、本社で仕事してる資格なんかねえ。さっさと辞めちまえ。」
  逃げちゃいけないと思いながらろじゃあは固まっていました。すると数秒後、
「いいか、よ~く覚えておけよ。自分で考えてすぐにきちんとした回答が出来そうもないときは、上席に確認することも考えろ。だがな、すぐに逃げるな。相手に対して、何が聞きたいのかちゃんと復唱して、再確認の上、電話で折り返し連絡させて欲しい旨を伝えるんだ。そして、相手の都合を確認した上でいつまでに連絡するかを確認した上で電話を切るんだ。これは会社内の電話に限らず、お客様や提携先とか、外からの電話に対して共通して配慮すべき礼儀だ。せっかく、本社に配属されたんなら、それぐらいのこと、はじめから出来るもんだと相手が思って当たり前だと思って接してくることぐらい判った上で仕事をしろ。これが当たり前に出来ない奴はどこの世界でも使い物になんねえんだ。いいな」
  このときの話し方は、その直前の話し方とは少し異なって諭すような話し方になっていました。そして次のようなことも話してくれたのです。
「若いときに本社にいる人間は、天狗になっちゃだめだ。後で現場に行って苦労するぞ。現場にいる人間からの問い合わせはホントに困ったときにかかって来るんだと覚えておけ。そんなときに評論家面する奴はすぐに相手にされなくなる。お前のところには問い合わせをしなくなるんだ。それがイヤなら、早く一人前にならないとだめだ。Hさんによく教えてもらえ。ちょっとHさんに代わってくれ」
  促されてH課長にろじゃあは受話器を渡しました。すると、部下の非礼をわびた上でいろいろと問い合わせの件について回答しています。ろじゃあがあやふやにしていた部分についてすべて「~です」でそろえて、「~こういう風に~してくだされば、全く問題ありません」と結んで、最後に「何かありましたらまたご連絡ください」言って電話を切ったのでした。
  この一件は、ろじゃあがその後、「本社」で「法務」を行うとはどういうことかを考える上で非常に重要な原体験となったのでありました。と同時に人に何かを教えるということについて「法務部員の育て方」(育ち方?)について相当重要な示唆を得た機会にもなったのでありました。今考えると、このときガツンとⅠさんが言ってくれたおかげでろじゃあは天狗にならずに済みました。そして後に違う分野に行くときの「教育観」にも今考えるとずいぶん影響を与えてくれたと感謝しております。その意味では、将来のろじゃあの方向を決定するのに重要な電話だったという意味で、ろじゃあにとっては「運命の電話」だったのであります。Ⅰさんの話は今後も出てくることになります。
  さて、H課長が電話を切った後、ろじゃあはH課長からこの一件について指導を受けることになります。次回は、そのあたりからにいたしましょう(つづく)。

|

« 法務よ吠えろ 歌声よ怒れ | Main | 報道による人権侵害と放送による人権侵害・・・一緒か?別か? »

Comments

寝る前のひと時に読ませていただいたのですが、いろんな意味で目が覚めました。

続きをお待ちしています。

Posted by: kata | August 11, 2005 11:07 PM

kataさんへ
 ひょっとしてはじめてのコメントでしたっけ?(違ったらごめんしてね)
 kataさんみたいな若い法務担当者が読んでくれて書き込んでくれたのは大変うれしいです。法務の担当者の悩みとか挫折は、やはり法務の経験者のが共有しやすいですからねえ。法務部スタッフってどうやって育てるんだ?って結構大変な問題で、徒弟制度的なところもあるしまったく無干渉って場合もあって、若手の人たちにしても不安な問題の一つだと思うんですよね。
 法科大学院制度が入ってきて、今後の企業法務部は相当変わってくると思います。人材育成制度の中に法科大学院の制度を前提として何か組み込むかとか、結構重要な問題もあるんですけどねえ。若い法務スタッフほどキャリア形成の関係で興味を持ってもらいたいものです。あなたたちが日本の法システムの企業サイドでの明日を担ってくださるのですから。
 どれだけ参考になる話が書けるかわかりませんが、また遊びに来てくださいまし。ではでは。

Posted by: ろじゃあ | August 12, 2005 12:41 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 十人十色、法務部いろいろ(第四回)・・・「法務」というお仕事(2):運命の電話:

» 法務部のお仕事。 [にょぶろ!レッドロックスの風を見よ!(マイルハイ・クィーンシティから見た風景)]
今日、友人のお手伝いで調べ物をしていてこんな(ちょっと古いんですけれど)↓外資系 [Read More]

Tracked on August 13, 2005 01:51 PM

« 法務よ吠えろ 歌声よ怒れ | Main | 報道による人権侵害と放送による人権侵害・・・一緒か?別か? »