グループ会社運営の実務への影響はどうなる?・・・カネボウ事件で会計士が逮捕とのこと
カネボウ粉飾、会計士が不正指南…「連結外し」了承
この案件、産業再生とかとの手続きの関係などもあり、ロースクールや会計大学院とかでの教材としては非常に適した事案になりつつあるところもある訳なんだけれども、「粉飾決算への会計士の協力」?という論点が出てきたことで、そういうケース分析の論点の話だけではなく、少なからず、グループ会社経営におけるコンプライアンスや内部統制体制の構築・運営等の実際の実務面にも影響が出てくることになるのではないかと。特に、「会計士事務所におけるコンプライアンス」という視点は、いまや避けて通れない視点になってしまっていると思われ、異業種格闘技的な把握ではあるが、「年金基金のガバナンス」なんてのと同様の視点で考える必要があるかもしれないとろじゃあなどは考えてしまうわけである。
それにつけても、実際に立件という点で言うと、この「連結はずし」という言葉、も少し厳密に使う必要があるのではないか?などとも思ってしまうのでありやすねえ。記事では、こんな風な説明が。
関係者によると、多角経営で多くの関連会社を持っていたカネボウは、元社長・帆足(ほあし)隆被告(69)ら旧経営陣の指示の下、経営状態の悪い食品、衣料、不動産部門の関連会社などの株を取引先に保有させる手法で、意図的に連結決算の対象外であるように装い、グループ全体の決算を良く見せかけていた。この「関連会社などの株を取引先に保有させる手法」というのが問題で、実際にはそんな保有関係になかったのに専ら急遽事態を打開させるためだけの目的で保有「させる」ことにしたとかのケースを考える限りにおいては判断がやりやすいのかもしれないけれども、実際に実務においては○になるケースと×になるケースというのは結構微妙なんだろうなあ・・・などと門外漢なりに考えてしまうわけであります。
というのも、
金融機関で言ったら銀行法のグループ概念の考え方とか、事業会社で言ったら実質支配基準に基ずく連結の考え方などは、「・・・・・という場合には、連結対象」とか定めている訳で、そこから「・・・・に該当しない場合には連結対象ではない」という判断が導かれ、結果としてその枠組みの中で経営者は判断をする訳で。
ここでいきなり、粉飾決算かどうかという判断についてはその「・・・に該当しない場合」に持ってくプロセスが問題になってくるわけですよね、刑事罰を前提とした行為については。この粉飾決算についての構成要件のひとつに「連結はずし」という概念がどう位置づけられるのか・・・この辺の議論って、どんな感じになってたんすかね、今まで。
形式基準時代の枠組みの中だって、適正価格で後発的に持ち株関係を変更した場合のすべてが「連結はずし」という概念で語られてきたのかというと、必ずしもそんな場合ばかりではないのではないかと・・・。ましてや、実質支配基準に基づいて、持ち株関係じゃなくて派遣役員の数の変更であるとか保証債務の額であるとか、いろんな要因が想定されて、形式的な持ち株数によっても20と50だけじゃ判断できないような枠組みになってる中で、それらの前提となる事実を行うことについて粉飾の故意があったのかどうかというのは結構認定するのはややこしいというところもあるんじゃないかと思うんっすよ。
だから、「どういういきさつで」そういう状態になったのかというところが重要なのはこれは多分枠組みとしては変更ないんだと思うんだけど、企業においてどんな手続きで意思決定を行ったかというときのタイミングと「動機」が明確にできるような手続きを確保しておかないと、何かあると「連結はずし」ってことを言われかねない危うさがあるのではないか・・・・思い過ごしだといいんですけどねえ。
会計士が「うん」と言えばいいんだ・・・そんな姿勢が企業にあったかどうかはわからないんだけど、その前提にあるのは会計士の先生は「うん」といった以上間違ったことは言わなかった訳だ・・・ということではないというのは少なくともここ5・6年ではむしろ当然の前提になりつつある中で、じゃあ誰に確認したらいいの?という悩みを組織として抱えている企業というのは結構いるんじゃないかなあ・・・とろじゃあは思うのであります。
その意味では、一事が万事で、今回の件で「連結はずし」という言葉が独り歩きするのは結構しんどいものが企業サイドからするとあるのではないかなあと。株主としても結構複雑な心境になる問題なのではなかろうかと思った次第でありやす。
この辺の基準の明確化というのは誰が行うべきもんなんでしょうかねえ。
模範答案だと、刑事罰の点も含めてコンプライアンス体制の中で自ら基準を明確にする必要がある・・・なんてことになるんでしょうけどねえ(^^;)。
The comments to this entry are closed.
Comments
こんばんは。私もTBつけさせていただきました。
ほぼ同じ時刻に、同じものにエントリーしていたというのは不思議です。「連結はずし」に関心を寄せておられるのも同じようで。。
ただ、私のほうは、柳田邦男氏に怒られそうなほど、事実調査の裏づけのない「推論」の世界なんで、まあ「読み物」程度にお考えください。
ホントは足利銀行(預金保険機構)と中央青山のほうが、法曹としての興味がそそられるわけでして、またそっちのほう頑張ってエントリーします。(予定ですが)
Posted by: toshi | September 14, 2005 03:00 AM
はじめまして、いつも愛読しております。
「じゃあ誰に確認したらいいの?」というのはまさに私自身がここ数年抱えている悩みでもありまして、ますますそういう悩みを抱える人が増えるだろうな、というのが第一報を聞いたときの感想でした。
トラックバックさせていただきました。お目汚し失礼いたします。
#小学校時代にもてた話をされると、なぜか強烈にジェラシーを感じてしまうKOHでした。
Posted by: KOH | September 15, 2005 01:59 AM
KOHさんへ
コメントありがとうございます。
そうなんですよねえ。誰に聞いたらいいのか・・・
金融庁にノーアクションレター、皆さんが出しまくると金融庁答えてくれるんでしょうか・・・答えてくれないっすよね(^^;)。検察庁に出しても・・・まあ出してくれないっすよね。
ちなみに小学生の時、決して「もてた」訳ではありません。ただでさえ「個性的な」軽佻浮薄の極楽トンボなろじゃあ(ブログのラインナップと内容見ていただければお分かりでしょう(^^;))の数少ないお互いのいいところを理解できてた(はずの)女友達といろんな事情で中学3年生の時以降、物理的に音信不通になってしまったという実に悲しい物語なのでございります。ははは・・・ちょっとしゃべりすぎたなあ(^^)。
Posted by: ろじゃあ | September 15, 2005 02:22 AM
TBさせていただきました。
私が書くと与太話の文章になってしまう風になってしまうのですが、構造的には会計士事務所のガバナンスの問題があるように思います。
Posted by: go2c | September 15, 2005 11:28 PM