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October 10, 2005

「電子債権」という妖怪?・・・拡大ワークショップ雑感

  んでもって待望の拡大ワークショップです。
  日本私法学会では毎年の学会で、一日目の個別報告の昼休みの間の約1時間から2時間の間に「ワークショップ」といって、特定の分野のネタをいくつか掲げておいて、その分野の研究者が集って言いたいことを言い合う・・・じゃない、いろんな専門的見地から議論するという時間帯が設定されているんですね。
  これが今年は「拡大」ワークショップとして400人規模の大教室で実施されたということなのですが・・・。
  司会は慶応大学の池田先生で、コメンテーターが中央大学の商法の野村先生と東京大学の民法の内田先生ということで、時間は1時から3時までという2時間の長帳場。
  結局、質疑応答の部分は20分ぐらいしか時間が無かったのですが・・・
  ろじゃあ的には、民法の先生の立場というのは内田先生のコメントで言い尽くされていたのではないかと思います。また、商法の先生の立場からすると手形法の枠組みから説明したほうがやりやすいでしょ?というのが実際なのだろうなあと野村先生のコメントから勝手に推察させていただいた次第です。
  ろじゃあの感想としては、やはり、利用する企業の対象のある程度の確定あるいはセグメント化を明確にする必要があるでしょうし、対象債権についても、双務契約に基づく金銭債権で当該指名債権の譲渡時にはもう一方の債権との関係で468条が問題となるような債権と片務契約に基づく金銭債権とでは枠組みを変えた方が枠組みが作りやすいだろうということ(売買代金債権と貸金債権は同列には語れないだろうということ)、あと消費者向けの債権については別途の配慮が必要だろう(かつて相当昔に消費者手形が問題になったような類型ではそれこそ注意が必要でしょう)という当たり前の感想を再確認した次第です。ただ、それらの視点が共有できれば悪い話ばかりでもないような気がしておりまして、いたずらに「妖怪」扱いするのもどうかなあ・・・という気もやはりしたところですねえ。その意味では内田先生のコメントはその辺の配慮も含めて「民法学者としてのコメントはかくあるべし」という非常に「紳士的な」よいコメントだったような気がいたします(^^;)。
  それと、企業向けの売掛債権等を想定する場合には、

従来の一括決済システムとかで問題とされていた事項、たとえば下請け代金債権との関係では独禁法上の問題をどのように止揚させるのかとか、売買契約における同時履行の抗弁や相殺の取り扱いをどうするのかとかの問題は当然意識しないといけないんでしょうけれど、企業法務あるいは企業システムとの関係でももう少し配慮すべき視点はあるとおもうのですね。
  たとえば、ある代金債権等の指名債権を更改等のロジックを使うのかどうかは別にして電子債権化したばあいについて、消滅するあるいは変容した結果のかつての債権についての債権債務関係の存在を疎明する必要のある場面というのは企業実務では結構多いわけです。たとえば国税当局からの調査が入った場合であるとか会計士の先生の監査であるとかいろいろな手続きで「原票」や「契約書」がその調査の対象とされることがある訳で。ですから仮に電子債権化したとしても、課税手続きや決算の手続きとか監査の手続きにおいて元の契約関係に関する帳票類は依然として必要という場面も結構あると思うのですね。その場合には、電子債権化を推進すると同時に、監査や課税関係の調査システムにおける帳票類の電子化およびそれらの手続きの電子化というものが同時に進行してもらわないといけない場面もでてくるはずでして。この議論は結構すっとんでんではないかなあ・・・という気がいたしました。せっかく作られたシステムがこれらの他の枠組みとの関係で「使えない」制度となってはしょうがないのですから、この点はやはりもう少し検討の視野にいれられるべきかもしれませんねえ。
  あと、これはもう既に検討されているのでしょうが、電子債権化した世界で、その電子債権への差し押さえであるとか訴訟における証明関係の手続きであるとか、はたまた倒産手続きにおいて管財人との関係で電子債権の存在との関係で紛議が生じる可能性は無いのかとか、手続法的な場面での議論がこの後必須であること等は皆さん共有されてるんですよね?(^^;)
  まあ、かようにいろいろな突込みが可能なネタではあるのですが、ろじゃあは、これが進むと証券化手続きも影響を受けるのだろうかと考えてみました。う~ん、なんとも言いがたいところなのですが、ただ、電子債権化の制度設計で考慮すべき要因として上にあげた論点というのは、実は証券化の仕組みを作るときに常に配慮されるべき項目なんですね。だから、証券化の法的リスク分析を行なうときの目で、電子債権を考えてみるという営みをろじゃあは少しする必要があると思いますね。
  その際、注意を要するのは、「手形を使わない分野で」無因性を前提とした金銭債権の世界でお仕事をしてきた方の視点だけでは制度は結構痒いところに手が届かないのではないかと思います。殊に、売買代金債権とかを債権譲渡したときに異議なき承諾を債務者から取ればいいじゃないかというところから出発する世界の視点から、この制度を構築しようとすると中小企業向けや消費者向けの金銭債権については相当困難を伴う結果を招来させかねない点に留意すべきだと思います。お願いですから「入居保証金の証券化」と同じようなレベルの制度にはしていただかないような方向で関係者の方におかれましてはご検討いただければと切に願うところでございます。
  この点、ろじゃあも一本何か書かなきゃいかんなあ・・・スケジュール管理しないとなあと強く思ったのでございました。あと、決済をどうするのかですよね。作った債権に決済手段としての位置づけまで付与するのか・・・そうするとまたいろいろややこしいお話がでてくるのでしょうねえ。まあ、その前にやることがたくさんあるような気がします(^^;)。
  取りとめのない雑感ということでとりあえず眠いから寝ます(^^;)。

  ところで、売掛債権を電子債権化するA方式で作られる仕組みって、CPの発行とどう違うんですかね?(^^;)

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Comments

金融法学会と私法学会にいってきました。
初めて私法学会の傍聴をしたのですが、金融法学会と比較すると、
金融実務家や弁護士は少ない、(今回だけのケースだけに当てはまるのかもかもしれませんが)民法と商法の学者同士の議論が面白い、規模が違う(当然か?)と初参加の感想です。

ろじゃあさんの電子債権の拡大ワークショップについて簡単な記載がありますが、民法学者にとって、いままであまり注目していなかった手形債権でも、指名債権でもない「新しい金銭債権」の法制化への反応には、大変興味深く、感じました。
また、翌日は「取締役の責任」のシンポジウムを聴講したのですが、企業実務家として、このテーマだと、商法の取締役の責任、個別業法、その他企業取締役の遵守べき法令の範囲は何か、法令以外の責任範囲は何かと個別論に走ってしまうのですが、民法学者の京都大学の先生が、民法学からの取締役の善管注意義務に関する契約責任論からのアプローチとその分析内容に、「民法」への再認識をした次第です。

いずれにしろ、企業における問題意識とその分析、解決へのアプローチと学者におけるそれとの違いを深く(?。正しい理解かどうかは今後考えます)考えさせられた3日間でした。


Posted by: 埼玉のよっちゃん | October 10, 2005 at 10:47 PM

埼玉のよっちゃんへ
お疲れ様でした。
今回は、埼玉のよっちゃんも会場でお会いしましたし、実は悪童さんも参加されてたんですよね。悪童さんはこの手の学会は初めてだったようですけど、結構興味深く思っていただけたようです。
ろじゃあのブログに遊びに来てくださる方々は、ホントに実社会との接続を大切にする視点を持っておられる方が多く、その上で必要な法的枠組みについてご自分から熱心に専門的な見地から研究を進めておられるという点でろじゃあは皆さん尊敬申し上げております。
よっちゃんが言及している取締役の責任の契約法的アプローチからの視点というのは、今回の新会社法後の世界では結構重要な視点で、コンプライアンスに関与されておられる方々はもうご認識されておられると思いますが、この機会にも少しご検討いただくと宜しいかもしれませんね。
また遊びに来てくださいませ。

Posted by: ろじゃあ | October 10, 2005 at 11:33 PM

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