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May 09, 2006

監査法人の業務停止=契約解除?それとも「≠契約解除」?

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<中央青山監査法人>全業務停止の処分へ 金融庁が検討カネボウの粉飾決算事件にからみ、金融庁は8日、4大監査法人の一つである中央青山監査法人に対して、今年7月からすべての業務を停止する処分を出す方向で調整に入った。停止期間は1~2カ月を検討している。近く、公認会計士・監査審査会(会長、金子晃・元会計検査院長)の了承を得た上で、中央青山側に通知して公表する。また、粉飾に加担したとして証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われている3人の公認会計士を、公認会計士法の規定に基づき登録抹消処分にする。3被告はすでに東京地裁の公判で、起訴事実を全面的に認めている。
総会前はとにかく業務を粛々と遂行させた上でということなんでしょうな。
それにしても、事務所内で一部の問題事例が発生した場合にこれだけの規模の監査法人本体の業務停止処分がなされるとなるとそれに伴う顧客との関係もややこしいことが色々あるだろうと思いながら読んでいたら次のようなくだりが。

 大手監査法人に業務停止処分が出されるのは初めて。停止処分を受けると、監査契約を結んでいる企業との契約をすべて解約しなければならない。中央青山は、金融庁からの処分期間の終了後に、改めて各企業と監査契約を結ぶことになるが、企業側が、重い処分を受けた監査法人と再契約を結ぶかどうかは未知数だ。再契約をせずに他の監査法人に契約を切り替える企業が多数に上れば、中央青山の経営に重大な影響を及ぼす恐れも出てくる。
これは公認会計士法?等の法律による規定に明文の規定があるんですかねえ。 そもそも大規模な監査法人を前提とした規定になっているのかどうか。 ・・・ってんでちょいと公認会計士法を読んでみたのですが、第50条以下の罰則のところには懲役刑や罰金とかについての規定はあるのですが業務停止についての規定は存在しないというのが実際のようです。 ただ、第35条以下で公認会計士・監査審査会について定めており、同条第2項1号2号に
一  公認会計士及び外国公認会計士に対する懲戒処分並びに監査法人に対する処分に関する事項を調査審議すること。 二  公認会計士、外国公認会計士及び監査法人の第二条第一項の業務並びに日本公認会計士協会の事務の適正な運営を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣に勧告すること。
が審査会がつかさどる事項として掲げられておりやすな。 また、
第四十一条の二  審査会は、第四十九条の四第二項の規定に基づき第四十六条の十二第一項又は第四十九条の三第一項若しくは第二項の規定による権限を行使した場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、公認会計士、外国公認会計士若しくは監査法人の第二条第一項の業務又は日本公認会計士協会の事務の適正な運営を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣に勧告することができる。
という規定による勧告もできることになってまふ。 これとは別に会計監査人協会についての規定で
第四十六条の十二の二  内閣総理大臣は、協会が法令、法令に基づく行政官庁の処分若しくは協会の会則その他の規則(以下この条において「法令等」という。)に違反した場合又は会員が法令等に違反する行為をしたにもかかわらず、当該会員に対し法令等を遵守させるために協会がこの法律、この法律に基づく命令若しくは当該会則その他の規則により認められた権能を行使せずその他必要な措置をすることを怠つた場合において、協会の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その事務の方法の変更を命じ、又は会則その他の規則に定める必要な措置をすることを命ずることができる。
としていますので内閣総理大臣は結構なことができることになってますな。 実際には、
第四十九条の四  内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。
という条文がありますので金融庁が上記内容いついての処分についてはこれを行うことになると・・・。例によってややこしいなあ。

ところで、記事によれば同監査法人は

国内の4大監査法人の一つで、00年4月、中央監査法人と青山監査法人が合併して誕生した。出資金15億700万円。公認会計士1616人が所属している。約800社の上場企業と監査契約を結んでおり、国内に25カ所、海外に28カ所の拠点を持つ。欧米を中心に業務展開しているプライスウォーターハウスクーパースグループと提携関係にある。

とのことなので、これらの契約解除手続きを事務所をあげて行わなければならないことになりますね。

上場企業800社ということなので弁護士にこの案件を依頼するとしても結構大変だとおもうんすけど。
大手の事務所にお願いするとしても、こと監査に関する契約なので監査先の企業との間で監査対象になる業務(これはある企業についての業務全般ということになるだろうから広く考えると相当広くなり得るのではなかろうかと)との関係で何らかの関係がある弁護士の先生がいたりすると利益相反などの関係でお仕事してもらえない可能性もあるのではなかろうかと。
かといってそういう企業との関係で利害関係がない弁護士の先生を「探す」というのも結構大変ですわな。
そもそも800社のほとんどの企業との間で利害関係が今までなかった弁護士先生の事務所が単体でこれだけの案件を処理する規模の事務所かどうかはわからないし、見つけるのは大変だろうと思うわけで。
単に解除の通知を出せばいいという単純なものではなかろうと思うのですよ、実際は。
契約解除に伴い、導入しているシステムやその管理関係等の継続的な契約関係は現場ベースでは結構ややこしい問題があるのではないですかねえ。
そればかりでなく相手先企業によっては、監査法人と企業の間の支払関係の清算に必要な手続き、あるいは監査に必要な限度でやり取りしている各種情報・帳票の返還に伴うさまざまなややこしいお話(業種によっては伝票の中には個人情報に該当するものもある可能性もあるかもしれない)があり得るわけで、これらを「次の監査法人」に顧客企業が「仮に引き継ごうと思えば問題なく引き継げるように」するところまで要求される可能性だってあるのではなかろうかと余計な心配をしたくなってきたりして。
今回はあくまでも3ヶ月の業務停止処分ということなので、そのあとは監査法人として業務を遂行することができるという前提なんですよねえ。
だとすれば、厳密に考えればこれだけややこしいことがある可能性のある契約解除が「当たり前」であることを前提に考えるのであるとすると、顧客企業にとっても大変な負担になるだろうというのは普通に考えれば誰でもわかることではなかろうかと。
仮に上記契約の解除が法律に定められたものではなく行政としての処分の枠組みの問題なのだとすると、処分を必要とする趣旨とその処分による効果および影響との間で均衡が取れているかどうかは今一度検証する必要があるのではなかろうかねえ・・・なんてことを考えてしまいました。
業務停止処分いついては色々な選択肢が想定しうるわけで、特定の分野の会計士グループに問題があったという場合には、金融機関や貸金業者の業務停止の問題と同じように特定の分野や特定の店舗についての処分が可能な形態があってもいいかもしれないし(まあ、法人ぐるみだと判断されれば同じだとは思うけど、形の上では今回はそういう前提ではないのでしょ?一応監督責任ということのようだし)、有期の業務停止の場合には民事上の契約関係は維持したまま当該期間中は資格がないということで監査業務が行えず、資格が復活した後は従前の契約関係で監査業務を行いうるという形でも上記解除を前提とした場合の実務上の相手先企業の煩雑さを考えれば十分対応可能なのではとも思うんですけどねえ。
大体、免許とか監督受けてる業態で「免許取消」の場合はともかくとして「業務停止」のような処分が定められてたり規則の制定や実施が政令やらに委任されてる場合ってのは、それらの行政処分による

業務停止期間が終了することを停止条件として業務を行い得る
というのがむしろ普通の考え方なのではないかとろじゃあなんぞは考えておりました。

だが、もし仮に今回の処分の狙いが3ヶ月間業務が停止されることで監査してた企業がその監査法人と再び契約をしないという方向で対応するだろうというところに目的があるならば別なわけで。
ただ、こういう目的が明確なのだとすればそれは3ヶ月の業務停止という処分で対応すべきではなく、資格の取り消し等の手法で対応すべきなのではないかと思ったりするんですけどねえ。
どうもこの手の処分のあとの当事者の自律に待つって枠組みが実際には明らかに処分以上の影響を及ぼすよなあって枠組みは若干精神衛生上そりが合わないところがございまして。
介錯してくれると思って切腹したのにいつまでたっても介錯してくれないとか、鞭打ちの刑を我慢して何とか人生出直そうと思って刑場に行ったら鞭打ちの最中に刑場の外の群集から思いのほか多くの石が投げつけられて・・・なんてシチュエーションをついつい想起してしまうモンですから。
最低限の武士の情け(←古い人間なんですかねえ)というものが感じられる枠組みもあっていいのではなかろうかということでございました。

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Comments

こちらからもTB送信させていただきました。私は、業務停止≠契約解除だと思うんですが、どうなんでしょう。ただ、実際には3ヶ月間業務をしないということでとどまるとは思えないんですけどねえ。「一部」とは法定の監査業務全てを意味するなんていう報道もあり、かなり危ない方向に議論が向かっているような気がしますね。

Posted by: neon98 | May 09, 2006 11:36 PM

会計監査人の欠格事由からわざわざ業務停止処分をはずした趣旨からするとどうも当然解除というのは解せなかったのですけどねえ。
なんか当然解除とか当然無効の法的構成をとらないといけない理由があるのなら別なんですけどねえ(^^;)。

Posted by: ろじゃあ | May 11, 2006 01:40 AM

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