起債差止め訴訟、大津地裁が差止め認める・・・今後の地方自治体のファイナンスの枠組みや自治体格付けへの影響は?
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これはちょっとびっくりしました。
裁判所が地方自治体の地方財政法上の起債目的の妥当性について判断を下ということなのでしょうが、恐らく地方自治体の起債についての差止めは初めてなのではなかろうかと。
YahooNews新幹線新駅、起債差し止め 大津地裁判決 住民側が勝訴
栗東市内で計画されている新幹線新駅の建設をめぐり、同市の住民が国松正一市長を相手に、市の負担費用のうち、JR東海の事業である線路の仮線建設などに充てる約43億円の起債(地方債)は地方財政法に違反するとして、起債の差し止めを求めた訴訟の判決が25日、大津地裁であった。稲葉重子裁判長は「仮線の費用を道路建設のための起債で負担するのは、地方債を限定的に許容した地財法の趣旨に反する」として、今後予定されている起債の差し止めを命じた。先般の滋賀県知事選挙との関係がまず第一に思い浮かぶのは当然としても、今後の地方自治体の運営や、再生手続きさらには、自治体と地元金融機関との関係やらにもついついその影響は如何程だろうかいな?と考えてしまうところでございます。
原告代理人によると、起債の違法性を認め、差し止めを命じた判決は全国で初めてという。嘉田由紀子滋賀県知事が掲げる新駅凍結方針を後押しし、10月の栗東市長選にも影響が及びそうだ。
地財法は起債の要件を「公共施設の建設費」と定め、裁判は、仮線工事がこれに該当するかどうかが争点だった。
というのも、
これから地方再生のための色々な動きが出てくるでしょうし、合併特例による起債の問題との関係とか、この判決の影響というのは結構一般の世界のお話とも関係してくる可能性があるわけで。
果たして、このような形での差止め判決の機能が今後どのような形で活用されるのかというのは非常に金融機関関係の法務の視点や地方債格付け等の実務との関係でも影響があるのではなかろうかなあと思うわけであります。
これ、端的に言うと、地方自治体におけるガバナンスとコンプライアンスがどのような見方でモニターされるのかという問題に関係するのだろうなと思うわけです。
ことは、地方の構成員としての地域住民から見た地方自治の観点からのモニタリングのお話だけではありません。
これはこれで重要なわけで、コミュニティの運営と方向付けに主権者としての地方の住人のかたがたの視点が重要という枠組みは多分変わらないのですね。
問題は、かかる自治体とお付き合いがある地域のメインバンクや、取引のある銀行が今回のような枠組みをどのように考えるかということだと思います。
地方債の問題は今まさにいろいろな方面から注目されてる領域であると思いますし、この判決の方向が今後も維持されるということになると、地方自治体の担当者や議会、そして取引金融機関としても「起債目的」の部分についての取扱いを今まで以上にコンプライアンスの問題として考える必要が出てくるでしょう。
判決は以下のように判断しているようです。
判決で、稲葉裁判長は過去に建設された新幹線と交差する道路は、高架式や地下道での工法が大半で、仮線工法は一事例もない、と指摘した。そのうえで「(道路建設と重複する仮線工事分の費用の)約87億円は、本来の目的である道路建設費(約6億円)と比べてあまりにも巨額で、他の工法より経済的な合理性を欠く」と判断した。
さらに、仮線と道路の工事の一体性を訴えた市側の主張を退け、「仮線の費用は(公共施設である)道路の建設費に含まれず、起債は違法」と結論付けた。
市が仮線以外の工法を検討しなかったことについても、「新駅建設のために仮線工法が決定していたため、道路工事と一体と説明して起債を発行し、財源を確保しようとしたと言わざるを得ない」と指弾した。
他方、投資家のほうからすると、今後色々な形での地方都市や地域に対する投資案件が増えてくる可能性があると思うのですが(地方債がらみの各種金融商品の問題もあるかもしれません)、そのときに今回の判決の方向感をどう受け止めるのか次第では、各種モニタリングやデューデリジェンスの内容にも影響を及ぼす可能性があるかもしれません。
もうひとつちょっと気になるのが、銀行実務における地方自治体の格付け実務の問題でして、地方自治体とお付き合いのある銀行による自治体の格付けというのが今後さらに進み、なお且つ精緻化?する可能性もあるかもしれません。
これ新規貸付や新発債の問題だったらそれはそれでなんとか・・・ということもあるのかもしれませんが、国による保証がなくなる枠組み後は、既発債についてどういう考え方をとるべきかというところでちょっと検討を要する部分があるのではないかと思う次第でございます。
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