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February 27, 2015

十人十色、法務部いろいろ(第八回):内線表と他のセクションとの付き合い方(その1)

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前回の後半のほうで

社内のほかのセクションの人たちへの「印象」って相当法務の仕事をやっていく上では極めて重要
って書きましたけど、そのあたりから。

前回の事件の少し前のある日のことです。
「ところでよう、○○(ろじゃあの苗字)、そろそろ社内のキーマンについては頭に入ってきたか?」
「キーマンと言われましても、毎日いろんな方と話もしてますし、誰がと言われてもすぐには挙げられませんよ。」
「ばかやろう。今までどれだけ俺と仕事してきやがったんだ。俺の仕事ぶり見てたら分かるだろうが。」
「いや、いつも課長のこと見てるわけではないですし、営業店からの電話に私が出て私が話していることもあるじゃないっすか」
「そうか。おまえは常に自分で電話を自発的にとっていたか?俺がいないときは先輩社員から電話が回ってくることもあったろう?」
確かにそうでした。課長がいないときには社内の問い合わせ電話については他の先輩が実際に電話を取ってその場で対応する場合以外に保留にした後わたしのほうに飛ばしてくる場合がありました。
「ええそうですね。それがどうしたんすか?課長」
「この一ヶ月間、どこからの電話がお前に回されてくることが多かった?」
「えっ?どこって・・・いろいろなところからですよ。営業店からもあるし、社内の営業本部とか企画本部とか財務本部からも・・・関連事業本部もありましたよね。」
「そうだ。そのとき相手にはどんなやつらがいた?」
「えーと、大体課長代理か次長の方々が多かったように思いますが、誰と言われても数が多すぎて」
「しょうがねえ奴だなあ、相変わらず。ほら、これちょっとみてみろ」
そういって課長は一枚の紙をろじゃあに渡してきました。
「これ、内線表じゃないっすか。本社内の。」
「そうだ。そこにでてる奴らを眺めながら、お前が今まで話をしたことがある本社内の人間をこいつでマーキングしてみろ」
また、作業かよ、と思いながら指示通りに内線表を眺めていきました。とは言っても、本社内だけでもセクションごとの内線表を見ていくと虫眼鏡で見ないといけないぐらいに文字が縮小されている一覧表ですので結構しんどい作業です。とはいえ、経営管理部から、企画本部、営業本部、財務本部、経理本部、管理本部、事務システム本部、総務本部、関連事業本部、業務本部等々、本社内のセクションごとにそれぞれの本部の中の部のところごとに電話で話した覚えのある人物のところを蛍光ペンでマーキングしていきます。
結構いるもんだなあと思いながらなんだかんだで時間かかるなあと少し疲れを感じ始めます。
東京地区統括部にかかろうとしたところで、
「ああ、そこまででええわ。」
といいながら煙草をくゆらせながら課長がこちらに椅子を寄せてきます。
「んで、どうよ?なんか気がつかねえか」
「えっ?・・・いや、数ヶ月の間にいろんな人と電話で話してるなあと」
「おう、そりゃそうだ。修士様ったってただ飯食わせとくわけにはいかねえからなぁ」
「だだ飯って・・・そんな言い方しなくてもいいじゃないっすか」
「まあ聴けよ。そんでよ、いまマーキングした奴らが一応お前にとってのキーマンだ。」
「ちょっと、待ってくださいよ。キーマンがこんなにいる訳ないじゃないっすか。ざっとみただけでも50人以上いますよ?」
「じゃあきくがよ。○○。キーマンとはどんな奴だ?」

「そりゃ、会社で仕事していく上で欠くことのできない人たちのことじゃないっすか。」
「そうだ。それで大体あってる。それで今のお前にとっては今しるしをつけた奴らが当座のキーマンなんだよ」
「なんで大体なんですか?それに当座のって・・・」
「お前がまだ新米だからに決まってるだろうが。お前は会社で仕事をしていくうえでといったな。法務部としてという製制約をつけた上で考えたかどうかはこの際に大目にみてやろうじゃないか。今のお前にとってはまだ会社の仕事の全体像がつかめてねえ。だが、だからと言って遊ばせておくわけにもいかねえ。
だからお前がお前の仕事をする際のキーマンを俺のほうでみつくろっておいたのよ。お前より先に入ってる先輩にその話をして、今のお前が今後の仕事をしていく上で知っておかねえと困るやつの声と顔を覚えてもらうためにそいつらから電話が来たら極力お前に電話をふるようにしておいたんだわ」
「それだったら、あらかじめ一覧表を渡していただけたら心の準備が出来たと思うんですが」
「そうしたらお前が構えるだろうが。お前が場数を踏んでいくという意味でも緊張感がなけりゃOJTにもならんし、そもそも自分で考える力がいつまでたってもつかねえだろうが。」
そんな子ども扱いされてたのか・・・それ嫌がらせじゃないっすか。
「でもな、他の理由もあるんだよ。こないだも話したけどよ、お前はあくまでもまだまだパンダなんだ。珍しい動物と思ってるやつらのが多いのよ。お前ももうお前が4卒じゃねえから周りが特別な視線で話してくるとか、最初から違和感感じてるだろう?はじめのうちはいいんだけどよ。そのうち、奴らもいろいろな反応をし始めるんだわ。修士でてる癖にこの程度か。人間としての対応はやはりなんかえらそうだなあとかな。」
煙草の煙を吐き出しながら課長は続けます。
「それでよ、俺はお前が「おばかだ」というイメージをもってもらうことで、他のセクションの奴らからの特別視のバイアスをはずすことにしたんだ。お前四卒で入ったら入ったで俺は法学部出身ですからって身構えるほうだろうが。自分から壁作ってる奴は会社では仕事しずれえんだよ。」
そしてこちらを向いて
「間違るんじゃねえぞ、○○。何度も言うが、俺りゃあ、ホントにおめえがばかだなんざ微塵もおもっちゃあいねえよ。どちらかというと生きにくいやつだなあとは思ってるけどよ。だがな、お前ぇみてえに、いろいろこだわる奴は他人からどうみられてるかについての意識が低くなるんだわ。俺がむかしそうだったんだがな。サラリーマンとして給料もらっておまんま食ってる限りは、自分がいつもそいつぁあ、気にしていねえといけねえ。自己管理なんざぁ、えらそうな言葉の前に、自己認識よ。自己認識。こいつが出来ねえやつぁーいろんなところにいるんだよ。こないだ天狗になるなっていったろ。あいつらあ、みな大なり小なりその点が弱点でもあるんだ。おめえにはそうなってほしくはねえんだよ。
そんでよ、本社内の連中もそうだが営業店の連中にもよ、おめえは少なくとも悪い奴じゃあねえな、んで馬鹿になれる奴じゃねえかって思われてるのが一番ええんだよ。いや、そう思ってもらう必要があるんだ。」
そして私がマーキングした内線表を見せながら
「いまお前が印つけた奴らは、うちの会社が仕事していく中では本社のそのセクションの仕事の内容を全国レベルで理解してるやつらだ。もちろん、俺と中が悪い奴らもいる。だがな、会社っーのはそういう仲の悪い奴らとも俺たちクラスの人間は無理にでも一緒に仕事して問題を少なくしていかねえといけねえのよ。どっかの先生みたいに悪いことは悪い、って言ってりゃあいいってもじゃあねえんだ。お前の入社すぐのころみたいによ。お飯食ってる以上は最低限、問題を解決できる方向で折り合いをつけるための努力をしねえといけねえんだ。
そのためには自分の思ってる自分の力がどれくらいかと、自分がどの点についてはどのぐらい無能かということを知っておかねえといけねえんだ。自分で俺はそんなことねえとひとりで考えてたら何時までたっても自分の無能さがわからねえのよ。」
「でも無能ってことは・・・そりゃ至らないところはあるかもしれませんが」
「俺たちは法務部だろ?法律だけ知ってますって胸張ってちゃあ商売になんねえんだよ。この部分については知ってます。その分野は知りませんじゃとおらねえんだ。分からなきゃ仕入れなきゃいけねえ。今までやったことがない法律の分野でも仕事で必要だと他のセクションが言うなら必要な情報を提供してやらねえといけねえんだ。そのためには自分の手に負えそうなことと、手に負えそうにないことを判断できるようにならねえといけねえ。100パーセント見分けろとはいわねえ。だが大丈夫ですと軽々に返事してそれが大事になることだってあるんだ。テストで論点間違えたってだけならテストの点がその回は低かったで終わるわな。でもよ、お前がろくすっぽ調べもしねえで安請け合いしてそれを信じてプロジェクトが動いて、実は法律上問題があったってなったらお前はどうするよ?」
「そんときは謝罪して、自分なりに責任をとることになるんじゃないんですか。」
「ばかやろう!おめえが謝って土下座してそれで済む話なんざねえと思え。お前の首差し出したってなんの足しにもならねえ話がほとんどなんだよ。何様だとおもってやがる。軽々しく責任とればいいだろうとかえらそうに口にするんじゃねえ。百年はええわ。若造が。」

この話のあと、課長にはろじゃあはこういわれてました。

社内の各セクションにはキーマンがいる。そいつらを早く覚えろ。そしてそいつらと話をして何でそいつらがキーマンだと思うかを考えろ。
キーマンと言われてもまだ誰がそのキーマンだかはわかりませんといったところ、返ってきた答えは以下の通りでした。
「順序が逆だ。仕事に慣れて、あいつらと話をしていると、その分だけ、だれがキーマンだか見極める目が出来てくるんだ。おまえの中によ。法律をお前なりに勉強したのはたしかだろうさ。だがな、法律に関係する分野でもそうでなくても、人のために働いておまんま食っていくためには、相手がどういう相手かを見極めていく目を養うことも必要なんだ。今までのお前はある意味では節穴の部分のほうが多かったわけだ。法律はよく知ってるが人を見る目もなけりゃあ、相手がどの程度の法的なバックグラウンドがあるかも配慮することができる能力のない節穴だらけでコミュニケーションする気もねえ自称法律のプロなんざ、社内で困ってる奴らにとっても、うちの本社内のほかのセクションでもましてや法務部でも必要とされねえんだよ。」
かくして、さらにろじゃあの苦悩は続くのでありました。
さて、次回はこの話の続きと、前回の最後のほうで言及してましたお話のほうについて考えていくことにしましょう。
(なお、今までずっとキーマンといいう言葉を使ってきましたが、今の言い方だとキーパーソンとなるんでしょうね。以後もこの話の関係では当時の言い方を使わせてもらいます)


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